「熱処理ビールって何?」──そんな疑問を持った方へ。
熱処理ビールとは、製造過程で加熱して酵母を殺菌し、保存性と味の安定性を高めたビールのこと。生ビールとは異なり、まろやかで深みのある味わいが楽しめ、常温でも長期保存できるのが特徴です。本記事では、その定義や特徴、生ビールとの違い、メリット・デメリット、日本と海外のおすすめ銘柄、おいしい飲み方まで詳しく解説します。
熱処理ビールとは?
ビールは大きく「生ビール」と「熱処理ビール」に分けられます。ここでは、加熱によって酵母を処理するこの製法の概要を、初心者にも分かりやすく解説します。
定義とパストライゼーション製法
熱処理ビールは、製造工程で60〜65℃程度の温度で短時間加熱し、酵母や雑菌を殺菌したビールを指します。この工程をパストライゼーションと呼び、保存性や品質の安定化を目的としています。加熱により微生物の活動が止まり、長期間常温で保存できるようになります。(※)ビールの風味はやや変化しますが、まろやかさや安定した味わいが特徴です。
(※)参考:ビール酒造組合
熱処理ビールの歴史と現状
かつては日本国内で熱処理ビールが主流でしたが、ろ過技術の進歩により生ビールが一般的となりました。生ビール人気の影響で国内の熱処理ビールは減少しましたが、サッポロラガー(赤星)など一部銘柄が今も販売されています。海外では依然として熱処理製法が多く採用され、輸出や長期保存が必要なビールで重宝されています。
生ビールとの違い
同じビールでも「生」と「熱処理」では製法も味わいも異なります。どのような違いがあり、それが飲み口や保存方法にどう影響するのかを解説します。
製法と保存性の違い
熱処理ビールは加熱で酵母を死滅させるため、常温で長期保存できます。生ビールは加熱せず、ろ過で酵母を除去するため冷蔵保存が必要です。輸送や保管の自由度は熱処理ビールが優れますが、香りやフレッシュ感は生ビールに軍配が上がります。保存性と鮮度、どちらを重視するかで選び方が異なります。
味わいの違い
生ビールは加熱処理を行わないため、フレッシュで華やかな香りとキレのある味わいが楽しめます。一方、熱処理ビールは熟成感やまろやかさ、香ばしさが特徴で、落ち着いた風味が魅力です。加熱により一部香り成分は減少しますが、その分コクや奥行きが増し、じっくり味わいたいビールとして好まれます。
熱処理ビールのメリットとデメリット
熱処理ビールのメリット
熱処理ビールの最大のメリットは、保存性の高さと味の安定性です。加熱処理によって酵母を死滅させることで、微生物による品質の変化を防ぎ、長期間にわたって安定した風味を維持できます。そのため、輸送や保管がしやすく、特に常温流通にも適しています。
また、加熱処理によって生まれる独特のコクやまろやかさも魅力の一つです。熱処理によってビールの風味が落ち着き、香ばしさや深みが加わるため、じっくりと味わいたいビールとして楽しめます。
熱処理ビールのデメリット
一方で、熱処理ビールにはデメリットもあります。最大の課題は、加熱による風味の変化です。熱を加えることで一部の香り成分が失われたり、微妙な味のニュアンスが変化することがあります。そのため、フレッシュで華やかな香りを求める人には、生ビールの方が好まれることが多いです。
また、最近のクラフトビールブームでは、生ビールならではのフレッシュな味わいが人気を集めており、熱処理ビールはやや古風な印象を持たれることもあります。そのため、熱処理ビールは長期保存向けや、安定した味を求める人に向いているスタイルといえます。
日本の熱処理ビール銘柄
国内で飲める熱処理ビールは限られていますが、その中には長く愛される定番もあります。ここでは代表的な日本の銘柄を3つ紹介します。
サッポロラガービール(赤星)
サッポロラガービール、通称「赤星」は、日本国内で唯一の定番熱処理ビールとして知られています。加熱処理によって熟成された味わいが特徴で、麦芽のコクとしっかりしたホップの香りが楽しめます。一般的な生ビールと比べると、まろやかで奥行きのある味わいが感じられ、飲みごたえがあります。熱処理ビールならではのクラシックな風味を楽しめる一杯です。
キリンクラシックラガー
キリンクラシックラガーは、伝統的な熱処理製法で作られるラガービールの一つです。生ビールが主流となる以前の製法を守り続けており、コクのある麦芽の風味とホップのほのかな苦味が特徴です。まろやかでバランスの取れた味わいが楽しめるため、じっくりとビール本来の旨味を味わいたい人におすすめです。
エビスビール
エビスビールは基本的に生ビールですが、一部の限定版では熱処理製法を採用しています。熱処理による濃厚なコクと深みがあり、麦芽の甘みや豊かな香りが際立つ仕上がりとなっています。エビスブランドならではの贅沢な味わいをより一層楽しめるビールで、通常のエビスビールとは異なる飲みごたえが魅力です。
海外の熱処理ビール銘柄
海外では今も熱処理製法が主流の国もあります。ここでは、世界的に知られる熱処理ビールを国別にピックアップします。
ピルスナーウルケル(チェコ)
ピルスナーウルケルは、1842年に誕生した世界最古のピルスナービールとして知られています。現在は主に生ビール(非加熱処理版)が流通していますが、一部では熱処理されたボトルビールも販売されています。熱処理版は麦芽の甘みとホップの苦味のバランスがより安定し、よりコクのある味わいを楽しむことができます。チェコならではのザーツホップの爽やかな香りも特徴で、クラシックなビールの魅力を味わえる一本です。
バス・ペールエール(イギリス)
バス・ペールエールは、イギリスを代表する伝統的なペールエールであり、一部に熱処理版が存在します。カラメルのような甘みと心地よい苦味が特徴で、じっくりと味わいたくなるビールです。熱処理によって熟成された味わいは、香ばしさとコクをより引き立て、英国エールらしい奥深い風味を楽しめます。クラシックなエールを好む人におすすめの銘柄です。
熱処理ビールを美味しく楽しむ方法
せっかく飲むなら、熱処理ビールの魅力を最大限に引き出したいものです。この章では温度・グラス・ペアリングのポイントを紹介します。
適切な温度で飲む
熱処理ビールは6〜10℃程度で飲むのが最適です。冷やしすぎると香りやコクが感じにくくなるため、冷蔵庫から出して少し置いてから飲むのがおすすめ。適温にすることで麦芽の甘みやホップの香ばしさが際立ち、熟成感のある味わいをより楽しめます。
グラス選び
香りとコクを引き立てるには、口が広めのグラスやジョッキがおすすめです。グラスの形状によって炭酸の刺激や香りの立ち方が変わり、味わいにも影響します。ジョッキは飲みごたえを、口広グラスは香りを楽しむのに適しています。好みに合わせて使い分けることで、熱処理ビールの魅力が増します。
食事とのペアリング
熱処理ビールは揚げ物や煮物など、しっかりとした味付けの料理と相性抜群です。苦味とコクが脂っこさを和らげ、料理の旨味を引き立てます。和食の焼き鳥や味噌煮込み、洋食のローストビーフやグラタンなど、幅広い料理と合わせやすく、食事全体をより満足感のあるものにしてくれます。
熱処理ビールの魅力を再発見
熱処理ビールは、熟成感のあるまろやかな味わいが特徴で、生ビールとは異なる奥深い風味を楽しめます。サッポロラガービール(赤星)やキリンクラシックラガーなど、日本国内でも根強い人気を誇る熱処理ビールがあり、海外ではピルスナーウルケルやバス・ペールエールなども注目されています。
飲み方やペアリングを工夫することで、熱処理ビールの魅力をより深く味わうことができます。ぜひ、さまざまな銘柄を試しながら、自分に合った熱処理ビールの楽しみ方を見つけてみてください。


